でんぼ(腫れ物)の神さんとして多くの人に愛されている石切劔箭(つるぎや)神社。
伝承されている創建は神武天皇2年(紀元前659年)というから、2000年以上も前から人々の信仰を集め続けている由緒正しき神社なのである。
その石切さんのちょい西で拵え設えされているのが「旬膳 八起」だ。
大将はもともとは同じビルの隣にあった割烹、「八起」の料理長をしていたそうで、その店が閉店するにあたって、17年前の1998(平成10)年の8月3日に、今の場所に自分の店として独立オープンしたんだとか。
まずは飲み物だな。
アサヒビールが業務用として樽詰め限定で出している、琥珀の時間(とき)があるじゃないか。
ローストした麦芽を使った、いわゆるデュンケルタイプの生ビールで、キレイな琥珀色に心がそそられる。
では、いただきます。
スキっとしたキレがあって、香ばしいロースト香がたまらなく旨い。
アサヒ琥珀の時間(中) 550円(税抜き)
お通しのお浸しは、出汁の良い風味とカニの身の甘さがあいまって、この店の料理レベルの高さがうかがい知れる。
これは楽しみだぞ。
オクラと蟹のお浸し
さて、料理は何にするかな?
メニューは月替わりになっていて、その時々の旬のものがいただけるようになっている。
オーソドックスなものから、オリジナリティ溢れるものまで色々あって、こりゃかなり迷ってしまうじゃないか。

お品書きにはのっていないが、盛り合わせも出来るとのことなのでお造りをお願いしてみた。
ほほぉ~!これはまた何とも小気味の良い盛り付けだ。
手前は赤貝に、縞あじの焼き霜、それにさより。
奥が走りはもの梅肉で、となりは初がつおに剣先いか。
どの造りも透明感があって、切り口のエッジもピンと立っている。
鮮度が良い証拠だ。
イカは熟成させてあるらしく、ネットリと舌に絡みついてくる。
どれも最高に旨いぞ。
季節のお造り盛り合わせ
茶豆は一般的な枝豆と比べて、ゆでた時の甘い香りが非常に豊かで特徴的だ。
豆の味も濃厚でビールによく合う。
鳴門の茶まめ
トロトロで絹のように滑らかな茶碗蒸し。
それに生ウニをタップリのせ、お出汁の風味豊かな餡で優しく包んでいる。
旨くないワケがない。
生うにの冷し茶碗むし
はものすり身を湯葉で包んだ水餃子は、和テイストと中華の融合が面白い。
はもゆばの水ぎょうざ
調理は大将が一人で作っているのだが、早い時間帯で他の客が居なかったこともあって、手早く料理を出してもらえたのも嬉しい。
まだまだお造りや茶豆も残っているので、日本酒をお願いすることにした。
大将がまずオススメしてくれたのは、奈良県の老舗酒蔵「今西清兵衛商店」が造る春鹿の、夏のみに販売される夏しかだ。
春鹿の夏しか・・・面白いネーミングじゃないか。
華やかな吟醸香に、やわらかな米の旨味、そして爽やかな喉ごしが、いかにも春鹿らしい味わいのお酒。
純米吟醸 春鹿の夏しか 500円(税抜き)
京都ではグジと呼ばれる高級魚のあま鯛。
脂肪分が少なく柔らかで淡白な白身は、シンプルな塩焼きで水分をとばして食べるのが一番旨い。
あま鯛の塩焼
冬が旬のイメージの河豚白子をこの時期に?
確かにトラフグのシーズンは真冬だが、ゴマフグやマフグのように、5月中旬から7月に産卵を迎えるフグもいるそうなので、この白子はそんなフグのものなのかも知れない。
塩をチョンチョンとつけてほお張る、濃厚でいてものすごく甘い。
なんにせよ旨けりゃイイのだ。
夏ふぐの白子天ぷら
伊乎乃(いおの)は新潟県小千谷市の蔵元「高の井酒造」が造る酒だ。
魚沼米で有名な魚沼地域のことを、古人(いにしえびと)は「魚=いお」の帰る「ところ=野」から、伊乎乃と呼んでいたそうで、小千谷の米と水と人が造ったこの酒には、そんな杜氏の思いが酒名に込められているのだろう。
口に含むと柔らかな口当たりで、澄んだ綺麗な味わいが広がる。
旨味は十分ありながら、軽やかでキレの良い余韻が残る良い酒だ。
純米吟醸酒 伊乎乃 500円(税抜き)
ユニークな酒名の「丸にぼーいち」も新潟の酒で、1880(明治13)年創業の下越酒造が蔵元だ。
華やかな香りに濃醇な味わいが特徴的で、すっきりとした辛口に仕上がっているのも好みだな~
純米吟醸無濾過袋取り原酒 丸にぼーいち 500円(税抜き)
オランダ茄子?なんだそりゃ?
水ナスとか米ナスなんかの品種で、オランダ茄子というのがあるのか?
調べてみてもそんなのは見当たらなかったので、おそらく油で揚げたり焼いたナスを出汁で煮る、いわゆるオランダ煮のことを言ってるのかな。
柔らかく炊いたアワビの餡が絶品。
オランダ茄子あわびあん
酒向・・・いや、趣向を変えてビール。
クラッシックラガー(中瓶) 500円(税抜き)
ここまでは海の幸が多かったので、チョット肉も食べておきたい。
和牛の和風ステーキ
なんだ、この柔らかさは。
口に入れただけでとろけてなくなるとは、まさにこぉゆうことを言うんだろう。
肉の芳醇な旨み、脂の甘みを残し、ノドの奥の方にスーっと消えていく。
くどさは全くなく、そんじょそこらでは食べられない逸品だ。

旨い肉についついビールもススムくん・・・と。
極薄のグラスがまたオツだな。

梅雨の水を飲んで旨くなると言われ、大阪では夏の風物詩として、7月の24、25日に行われる天神祭りの頃が旬とされる鱧。
実は6月に獲れる走りの鱧も、身が分厚くて脂がのっている。
丁寧に骨切りされた身はふわふわで、口の中でほろほろと解けていくようで旨い。
はもの天ぷら
静かで落ち着いた雰囲気のなか、どの料理も本当に美味しくいただけた。
東大阪のお世辞にも開けているとは言えない片田舎で、こんなにも素敵なお店があるなんて嬉しい限りだ。
メニューに値段が書いてないので、一見にはチョット勇気が要るかも知れないが、それでもこれだけ食べて飲んで、女房どのと2人で2万円もいかなかったので、オッサン的にはとてもリーズナブルなお店だと思う。
聞くところによると、コチラの大将は、大阪の名店「浪花割烹 喜川」で修業されたんだとか。
なるほど、それでこのクオリティの高さにガテンがいった。
本当にイイ店だ、ごちそうさまでした。
八起
ジャンル:割烹 懐石 和食 創作
アクセス:近鉄けいはんな線新石切駅 1番出口 徒歩7分
住所:〒579-8013 大阪府東大阪市西石切町4-2-20 スターリースカイテラニシ(
地図)
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ぐるなび 東大阪×懐石料理情報掲載日:2015年11月23日
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